アクセシビリティ用語集
ウェブアクセシビリティの実務で頻出する30語を、基礎・規格・実装・支援技術・AI/SEOの5カテゴリで解説します。
要約義務化対応・WCAG/JIS準拠・AI検索最適化の実務頻出語30語を、カテゴリ別に2〜3文で解説した用語集です。
基礎
ウェブアクセシビリティWeb Accessibility
高齢者や障害のある人を含む誰もが、ウェブサイトの情報や機能を支障なく利用できる状態、およびその度合いのこと。視覚・聴覚・運動機能・認知などの特性や、利用環境の違いに関わらず使えることを目指します。日本では2024年4月施行の改正障害者差別解消法を背景に、企業サイトでも対応が急速に進んでいます。制度の全体像は義務化 完全ガイドで解説しています。
ユーザビリティUsability
特定のユーザーが特定の状況で製品やサービスを使うときの、有効さ・効率・満足度の度合いのこと。アクセシビリティが「誰でも使える」ための前提条件であるのに対し、ユーザビリティは「使いやすいか」に焦点を当てます。両者は対立概念ではなく、アクセシビリティの向上はすべてのユーザーの使いやすさにも寄与します。
色覚多様性Color Vision Deficiency
色の見え方が人によって異なることを指す言葉で、日本では男性の約20人に1人、女性の約500人に1人が特定の色の組み合わせを見分けにくいとされます。赤と緑、青とオレンジなどの区別が難しい場合があるため、色だけに頼らず、文字やアイコン・パターンでも情報を伝えることがアクセシビリティ対応の基本です。
合理的配慮Reasonable Accommodation
障害のある人から社会的障壁の除去を求める意思の表明があった場合に、負担が過重でない範囲で個別に対応を行うこと。改正障害者差別解消法により、2024年4月から事業者にも提供が義務化されました。ウェブの文脈では「サイトが使えない」という申し出への個別対応がこれにあたり、環境の整備が進んでいるほど円滑に対応できます。
環境の整備—
個別の合理的配慮を的確に行うための事前的な改善措置のことで、障害者差別解消法上は努力義務とされています。ウェブアクセシビリティ対応はこの「環境の整備」に位置づけられます。義務ではないものの、環境整備が不十分だと個別の合理的配慮も成立しにくいため、実質的な対応が求められています。
障害者差別解消法—
障害を理由とする差別の解消を推進するための法律(2016年施行)。2021年の改正(2024年4月施行)で、これまで行政機関等のみに義務付けられていた合理的配慮の提供が民間事業者にも義務化されました。ウェブアクセシビリティは努力義務である「環境の整備」に位置づけられますが、合理的配慮と一体で運用されるため、企業サイトの対応水準を実質的に規定しています。詳細は義務化 完全ガイドをご覧ください。
規格・法令
WCAGWeb Content Accessibility Guidelines
W3C(ウェブ標準化団体)が策定するウェブアクセシビリティの国際的なガイドライン。「知覚可能・操作可能・理解可能・堅牢」の4原則のもとに達成基準を定めており、世界各国の法制度や調達基準の技術的な物差しとして参照されています。日本の実務ではWCAG 2.1のレベルAAが標準的な目標です。実装の要点はWCAG 2.1 AA実装ガイドで解説しています。
JIS X 8341-3:2016—
日本のウェブアクセシビリティに関するJIS規格で、正式名称は「高齢者・障害者等配慮設計指針」の第3部(ウェブコンテンツ)。内容はWCAG 2.0と一致しており、適合レベルもA・AA・AAAの3段階です。公的機関の調達やアクセシビリティ方針では本規格が参照されることが多く、WCAG 2.1 AAに準拠すれば本規格のAAも同時に満たせます。詳細はJIS X 8341-3:2016 完全解説へ。
適合レベル(A・AA・AAA)Conformance Level
WCAGおよびJIS X 8341-3の達成基準を重要度で3段階に分けたもの。Aは最低限の水準、AAは公的機関や企業の実務で標準とされる水準、AAAは最も高い水準です。AAAはすべてのコンテンツで達成することが難しい基準を含むため、サイト全体の方針としてはAAを目標にするのが国際的にも一般的です。
アクセシビリティ試験Accessibility Testing
ウェブサイトがJIS X 8341-3等の達成基準を満たしているかを検証し、結果を公開する取り組み。ツールによる自動チェックと、スクリーンリーダーやキーボード操作による手動確認を組み合わせて実施します。公的機関ではウェブアクセシビリティ基盤委員会(WAIC)の試験実施ガイドラインに沿って「試験結果の公開」まで行うことが推奨されています。
VPATVoluntary Product Accessibility Template
製品やサービスがアクセシビリティ基準にどの程度適合しているかを自己申告するための標準フォーマット。米国の政府調達(リハビリテーション法508条)を起点に普及し、記入済みの文書はACR(Accessibility Conformance Report)と呼ばれます。海外エンタープライズとの取引やSaaSの調達審査で提出を求められることが増えています。
ADAAmericans with Disabilities Act
障害のある人への差別を禁止する米国の法律(1990年制定)。近年はウェブサイトも「公共の場」に準じるとしてADAに基づく訴訟の対象となっており、米国ではウェブアクセシビリティ関連の訴訟も数多く提起されています。米国向けにサービスを提供する日本企業にとっても無関係ではないリスクです。
EAAEuropean Accessibility Act
EUの欧州アクセシビリティ法。EC・銀行・電子書籍・交通などの製品・サービスにアクセシビリティ対応を義務付けるもので、2025年6月から加盟国での適用が始まりました。EU域内に顧客を持つ事業者は域外企業でも対象になり得るため、グローバル展開する日本企業にも対応が求められます。
実装
セマンティックHTMLSemantic HTML
見出しはh1〜h6、ナビゲーションはnav、ボタンはbuttonのように、要素の「意味」に沿ったHTMLタグでマークアップすること。スクリーンリーダーなどの支援技術は要素の意味を手がかりにページを解釈するため、セマンティックHTMLはアクセシビリティの土台です。検索エンジンやAIによるコンテンツ理解にも寄与します。
代替テキスト(alt)Alternative Text
画像の内容や役割をテキストで伝えるためのimg要素の属性。スクリーンリーダーはこのテキストを読み上げ、画像が表示できない環境でも代わりに表示されます。情報を持つ画像には内容が伝わる説明を、装飾目的の画像には空のalt=""を指定するのが原則です。具体例はaltの正しい書き方と実例で紹介しています。
コントラスト比Contrast Ratio
文字色と背景色の明るさの差を1:1〜21:1で表した数値。WCAG 2.1の達成基準1.4.3(レベルAA)は、通常サイズの文字に4.5:1以上、大きい文字に3:1以上を求めています。ロービジョンの人や、屋外の強い光の下で画面を見る人でも文字を読み取れるようにするための基準です。詳しくはコントラスト比4.5:1の解説記事へ。
キーボード操作Keyboard Accessibility
マウスを使わず、TabキーやEnterキーなどキーボードだけでページ内のすべての機能を操作できること。WCAGの達成基準2.1.1(レベルA)で求められる基本要件です。運動機能に制約のある人やスクリーンリーダーの利用者はキーボード操作が前提となるため、「キーボードで完結できないUI」は重大なアクセシビリティ上の障壁になります。
フォーカスFocus
キーボード操作時に、現在どの要素が操作対象になっているかを示す状態のこと。リンクやボタンにフォーカスが当たった際に枠線(フォーカスリング)などで視覚的に分かるようにすることが、WCAGの達成基準2.4.7(レベルAA)で求められています。CSSでoutline:
noneを指定してフォーカス表示を消してしまう実装は典型的なNGパターンです。
ランドマークLandmark
ページ内の主要な領域(ヘッダー・ナビゲーション・メインコンテンツ・フッターなど)を支援技術に伝えるための構造上の目印。header・nav・main・footerなどのHTML要素やWAI-ARIAのrole属性で定義します。スクリーンリーダーの利用者はランドマーク単位でページ内を移動できるため、目的の情報へ素早くたどり着けるようになります。
WAI-ARIAAccessible Rich Internet Applications
HTMLだけでは伝えきれないUIの役割・状態・性質を支援技術に伝えるためのW3C仕様。タブやモーダルダイアログのような動的なUIにroleやaria-*属性を付与して使います。ただし「ARIAを使わずネイティブなHTML要素で実現できるならその方がよい」が大原則で、誤った使用はかえってアクセシビリティを悪化させます。
アクセシビリティオーバーレイAccessibility Overlay
サイトのHTMLは変更せず、JavaScriptを読み込ませてブラウザ上で見た目や挙動を後付けで補正するタイプのアクセシビリティツールを指す呼び名。閲覧者が文字サイズや配色を切り替えるウィジェット型の機能を備えるものもあります。ツールのタイプ別の違いはアクセシビリティツールのタイプ別の違いをご覧ください。
支援技術
支援技術Assistive Technology
障害のある人がコンピュータやウェブを利用するのを助けるソフトウェア・機器の総称。スクリーンリーダー、画面拡大ソフト、音声入力、視線入力、点字ディスプレイなどが含まれます。ウェブアクセシビリティ対応とは、こうした支援技術が正しく動作するようにコンテンツ側を整えることでもあります。
スクリーンリーダーScreen Reader
画面上のテキストやUIの情報を音声や点字で読み上げるソフトウェアで、視覚障害のある人のウェブ利用に不可欠な支援技術です。代表的なものにJAWS・NVDA(Windows)、VoiceOver(macOS/iOS)、TalkBack(Android)があります。見出し・ランドマーク・代替テキストなどのマークアップを手がかりに動作するため、実装品質が使い勝手を大きく左右します。
キャプションCaption
動画内の発話や効果音などの音声情報を、同期したテキストで表示するもの(字幕)。聴覚障害のある人が動画コンテンツを利用するために不可欠で、WCAG 2.1では収録済み動画へのキャプション提供がレベルAの達成基準1.2.2として定められています。音を出せない環境で視聴するユーザーにも役立ちます。
AI・SEO
Core Web Vitals—
Googleが定めるページ体験の中核指標。読み込みの速さ(LCP)、操作への反応の速さ(INP)、表示の安定性(CLS)の3つで構成され、検索ランキングにも影響します。画像サイズの明示や不要なレイアウト変動の抑制など、改善施策の多くはアクセシビリティ・ユーザビリティの改善とも重なります。
構造化データStructured Data
ページの内容(組織・記事・FAQ・製品など)を、schema.orgの語彙を使って検索エンジンやAIが理解できる形式で記述したデータ。JSON-LD形式での実装が主流です。検索結果のリッチリザルト表示に必要なだけでなく、AI検索がコンテンツを正確に引用するための重要な手がかりにもなります。
AIOAI Optimization
AI最適化。GoogleのAI Overviewや対話型AIなど、AIが生成する回答の情報源として自社サイトが参照・引用されやすくするための最適化を指します。結論を先に述べる構成、定義や比較を明示したHTML構造、構造化データの整備などが主要な施策です。考え方はAIO / LLMOとはで解説しています。
LLMOLarge Language Model Optimization
大規模言語モデル最適化。ChatGPT・Gemini・Claude・PerplexityなどのLLMが回答を生成する際に、自社サイトの情報を正しく参照・引用するよう働きかける取り組みで、AIOとほぼ同義で使われることもあります。llms.txtの設置、AIクローラーへのアクセス許可、エンティティ(固有情報)の一貫した記述などが施策に含まれます。
llms.txt—
サイトの概要と主要ページの一覧を、LLM(大規模言語モデル)が読み取りやすいMarkdown形式でまとめてルート直下に置くファイルの提案仕様。robots.txtがクローラーの巡回可否を伝えるのに対し、llms.txtは「AIにどのコンテンツをどう理解してほしいか」を伝えることを目的とします。標準化の途上にありますが、採用サイトは増えつつあります。
AEOAnswer Engine Optimization
回答エンジン最適化。検索結果の一覧ではなく「答え」を直接返すAI検索や音声アシスタントに対し、自社コンテンツが回答として採用されるよう最適化することを指します。質問に対応した見出し設計、簡潔な結論ファーストの記述、FAQ構造化データの実装が代表的な手法です。アクセシビリティとの関係はアクセシビリティとSEOの関係で解説しています。
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